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ソーシャルワーク研究会便り17

2022.8.1

名寄市立大学 小泉 隆文


「農福連携」という言葉は浸透しているのか?


 10月23日に『農福連携とソーシャルワーク』というテーマでご報告させていただいた。報告の内容は、わが国における農福連携の現状を既存の統計やアンケート調査を用いて概観したものや、実際に私が障害福祉サービス事業所で経験したものであった。

近年、農福連携はさかんに取り組まれている。農福連携という言葉がまだない時期に、農業労働力不足が深刻になり、苦肉の策で編み出された労働力確保の方法が、「障害者の農業分野での就労」であった。いまは障害分野だけではなく、高齢分野、生活困窮分野と、その範囲はかなり拡大されている。また、政府の農福連携関連の補助金も予算が少しずつ増えている。

 このような状況のもとで、研究者、福祉関係者、行政関係者、農業関係者の間では「農福連携」という言葉はかなり浸透している。しかし、福祉にも農業にも関わっていない人の間では、「農福連携」という言葉は果たして浸透しているのであろうか?

 先日、本務校のオープンキャンパスで体験授業を行う機会を得た。テーマは担当科目である「農福連携と地域福祉」というテーマにした。午前と午後、あわせて50人くらいの参加者がいたであろうか。体験授業の冒頭で、参加者に『「農福連携」という言葉を聞いたことがありますか』という問いを投げかけてみた。すると、私の予想以上に「聞いたことがない」という声があがった。授業後のアンケートをみても「農福連携について初めて知り、興味がわいた」「新しい知識を得ることができてよかった」という感想があった。

 福祉関係者や農業者の間では「農福連携はいま勢いがある分野の一つだ」という声が多く聞かれる中、この高校生たちの感想は、私にとっては辛辣なものに感じた。オープンキャンパスに参加した高校生は、名寄という道内でも決して行きやすくはない場所にわざわざ訪問してくれた人たちであり、少なからず社会福祉に興味・関心があるはずである。しかし、その若い人たちの多くが、「農福連携」という言葉を知らないとは・・・。本当に「農福連携」という言葉は浸透しているとは言えないのではないかと感じた。

いまわが国では「地域共生社会」が目標とされているが、農福連携のきっかけとなった障のある人たちは、まだまだ偏見の眼差しでみられることがある。地域共生社会を目指すには、人々の生活の中に日常的に障害のある人が関わり、目にする機会があることが大切だと私は思っており、偏見の眼差しで見る人たちの多くは、障害者のことを知らない人達だと考えている。農福連携に関する活動や研究を今以上に発信することが、障害者への偏見を無くす方法のひとつであるとも考えている私にとっては、「もっと農福連携を発信しなくてはならない」と思わざるを得ない経験となった。

 今後も、農福連携に関する研究や、ゼミ活動に今以上に取り組み、積極的に発信し、地域共生社会構築に資する活動を行っていこう思った所存である。

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